読書『人新生の資本論』。

読書

長らくお休みしてまして、今後の更新も超不定期になりますが、久しぶりに書きますね。

 

(∀`*ゞ)テヘッ

 

読書のいきさつ。

Twitterでたまたま投稿を見てフォローし始めたこの本の著者、斎藤幸平さん。
投稿でベストセラー本を出してることを知って「早く買って読もうな~。」と思っていたら、センゲンサンデーの農家さんとその話になりました。
次の月には「貸してあげるよ。」となるわけです。ありがたや。

そこからすぐに読み始めて1/3は割と一気に読めました。
中盤はマルクスの資本論や様々な知識が前提になっているので難航。
終盤に差し掛かり、また面白くなって最後までは(私なりの)一気に読み切りました。
かかった時間は2ヶ月半(´▽`)
面白かった!!
☟この本です。

というわけで、書いてみますね。

そもそもいつまで成長するの

この本を読む前に山口周さんの『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』という本を読んでいて(この時初めてビジネス・経済・哲学みたいなジャンルを読みました)、自分の中にあった「経済が成長し続けることへの漠然とした違和感」の正体が少し見えた気がしました。

さて、私が『人新生の資本論』で最初に食いついたのは、第1章の三つの転嫁の話。
とても興味深くわかりやすかったので紹介します。
三つの転嫁とは「技術的転嫁」「空間的転嫁」「時間的転嫁」。
これだけでなんとなくイメージが湧きました。
この本ではこんな風に説明してくれています。

1.技術的転嫁
たとえば農業で言えば、土壌養分の循環が資本主義化で都市へのワンウェイに。
その分を化学肥料という『技術』で補うけれど、その化学肥料の生産には化石燃料を消費する。
さらには地下水の汚染や土壌の生態系の破壊も。
それは問題の解決ではなく環境への転嫁に過ぎない。

2.空間的転嫁
化学肥料の生産技術が開発される前に注目されたグアノと呼ばれる海鳥の糞。
南米の原住民が肥料として用いていたそれを欧米に持ち出し使用することで、欧米の地力は回復し都市の労働者たちの食料が供給された。
しかしそのために原住民の暮らしは抑圧され、中国の下層労働者は搾取され、海鳥の激減により資源が枯渇していった。
中核部の問題は周辺部からの掠奪で解決したように見えるけれど、実際は掠奪された弱者へのダメージに転嫁されただけ。

3・時間的転嫁
気候変動はまさにそれで、化石燃料の大量消費によって現代の世代は繁栄する。
時間差で噴出する問題に対処するのは次の世代であり、「台風よ、わが亡き後に来たれ!」の未来への転嫁である。

私なりに再構成しちゃってるので、正しくは本読んでください。笑
でもこれ読んでほんとそうだな~って思ったのです。
問題は1個も解決してないじゃん。
やっぱり。
とか言ってる自分は問題作る側にいるわけですが、罪悪感は持たないように心掛けています。
罪悪感がさらなる転嫁の元な気がするので。
落ち着こう。

成長を続ける限り、解決されない問題が生み出され転嫁され続けるのです。

それは私だった。

ここ数年で私が興味を持っていたことって、

1.有機農業
最初は健康への興味だったけど、知るうちにそれは環境のことだったり社会や経済を考えることだったりもします。

2.フェアトレード
『南北問題』って、最近やっと覚えたんです。
私たちの暮らしは貧困な国の人々に依存しているという話は以前にも書きました。
以前の記事はこちら

ただし、まずは現地の人が自分たちが生きるための食べ物を最優先で生産できることが大切。
そんなことを最近学びました。

3.教育
環境のことも教育のことも社会のことも、なんだか今のことというよりは自分が死んだあとのことな気がします。
その先の未来にワクワクしながら逝きたいというのが私の中にあって、だから今持っているものをなるべくちゃんと渡していきたいし、未来を生きる人が生まれるときに持ってきた羽をバッサー!!って広げられるように邪魔なものを片しておくとか。
『教育』というのはシンプルに「申し送り」なのかな~、なんて最近は考えています。
自分たちが作ったルールと発見の申し送り。

上記1.2.3.は、この本に書かれている1.2.3.に対応しているということに、この記事を書きながら気付きました。
つまりはそれが、 「経済が成長し続けることへの違和感」 の正体だったのではないかと。
その違和感と向き合うことが今の私の生き方になりつつあるなぁ、と。

『価値』ということについて。

そして、資本主義が欠乏を生み出す話。

この本でも先述の山口周さんの本でも『コモン』という言葉が頻繁に出てきます。
『コモン』commonという言葉は、『共同の、共通の』とか『公共の、公衆の』という意味を持ちます。
元々は、水も土地もみんなのもので、自由に使うことができました。
それが今は、水はペットボトルに入って売られているし、土地は投機目的のマンションの売買で空き家だらけ。
代わりに家賃を払えなくなった住人は追い出され、ホームレスもたくさん。

資本主義では、貨幣で測られる『価値』が重要視されるので、例えばマンションなら「人が住む」という『使用価値』が損なわれていきます。
囲い込んで希少価値を付けることで『価値』を上げ、より多くの貨幣を得た人が一握りの成功者。
残りの人はホームレス。

「使用価値」の生産とそれによる人間の欲求の充足は、資本主義以前の社会においては経済活動の目的そのものであったにもかかわらず、その地位を奪われたのだ。

『人新生の「資本論」』斎藤幸平

価値の本質、生産の本質について、いま一度考える時期が来ている気がしています。

私の身近な話題。

この辺りを読んでいたら、私の身近な話題について考えることに。

種子法・種苗法の改正について。
国内の品種を守るため、種苗育成者の権利を守るために農家による登録品種の自家増殖を禁止するというものだったと(見方は様々)。
それは品種の『価値』を守るためであり、ひいては種苗育成者や産地の『資本』を守っているわけですよね。
ただ、それによって農家は今まで自由に使えていた種苗が登録品種であれば毎回許諾料を払わないと使えなくなります。

本来なら、美味しい作物ができたら多くの人に食べてもらいたいと思うんです。
「うまいだろ!元気になるだろ!」って。
生産者や開発者がその気持ちを見出せないのはもしかして、資本主義のせいなのかな、という考察。

本来であれば、農産物の『使用価値』は増殖によって無限に広がります。
だけど、みんな資本主義の中で生きているので貨幣が必要。
そのために、囲い込んで希少価値を守る手立てが必要なんですよね。
だから、高く売れるブドウやイチゴを開発し、それが海外に流出しないように守りたい。
となると、この種子法・種苗法の改正は資本のための改正と言えるのでは?なんて思いました。

それからもう一つ。
「ゲノム編集で筋肉量1.5倍の鯛がついに食卓へ」というニュースが飛び込んできました。
高級魚である鯛が安く食べられるようになるとのこと。
鯛の他にフグやサバの研究も進んでいるんですって。
世界の食糧不足問題を解決する技術で「まず鯛を」「まずフグを」というのは資本主義っぽい。

エッセンシャル・ワーク。

エッセンシャルessential:必要不可欠な。

エッセンシャル・ワークの例として、ケア労働や保育士・教師が挙げられています。
これらの仕事はマニュアルに則ってこなすだけではありません。
相手の体調や感情によって柔軟に対応する必要がある。
機械やAIには任せられない、つまり人件費のかかる効率の悪い仕事です。
効率が悪いから、資本主義では従事者の給料は安い。←やりがい搾取。
そして常に人手不足。
農業だってこれにあたりますよね。

一方、人気があって高給なのは華々しい世界。
マーケティングや広告とかが例に挙げられているんですが、それそのものが人の欲求を満たすわけではないという意味で社会の再生産そのものにはほとんど役に立っていないというお話。
つまり、資本主義の社会では『使用価値』を生み出さない仕事に『価値』があり、『使用価値』のある仕事に『価値』がないとみなされるのです。

仕事だって、『価値』ではなく『使用価値』を重視しよう。
それによって犠牲の多い成長から脱しよう。
その他にも脱成長のカギはたくさんありますが、特に今の私にマッチしたのがこの部分でした。

まとまらないまとめ。

この本を読んでみて、いろんなことをしてきた私が何に向かってきたかと言ったら『脱成長』だったのかも。と思えてきました。
「おんなじチラシが何回もポスティングされるのが嫌だな。」とか「もったいないおばけってどこに行っちゃったの?」みたいな人は、実はこの本と同じことを考えてるような気がします。
ちょっと難しいんだけど、とっても面白い本でした‼
貸してくれた某農家さんに感謝☆

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